介護の中には、「義務感からの介護」というものもあります。この義務感からの介護は、大変です。
病気をきっかけに「関係は喪失」してしまったのに「介護関係だけが義務」として残ってしまうことがあります。すでに関係は冷え切っていたけれども倒れてしまった以上、面倒をみるのは自分しかいない、という義務感からの介護です。家族のあり方が多様になった現代では過去の介護例が役立たない場面が多くなる可能性があります。そうした義務感で介護する方たちが多くなっていくかもしれません。そういう人にとってこそ、割り切った「ふり」が大事になるのです。
たとえば「今日は初雪が降ったよ」とにっこり微笑む。もちろんそれはふりで構いません。もし、言葉の話せない相手から、もし、微妙な微笑が返ってきたとしたら、何がご自分の中に起きるでしょう?小さな喜びのさざなみが起き、もしかすると、自分の笑顔がほんとうの笑顔になるのではないでしょうか。
こうした「ふり」こそ、義務の介護者のスキルであり、それが介護する側・される側の大切なコミュニケーションの救いの手なのです。
(キョーリン製薬株式会社 心のケアノートU)
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